肩の痛みと制限による不安
「なぜ色々な所に行っても改善しないんだろう?」
「この肩の痛みはどこから来るの?」
「夜も眠れない痛みをどうにかしたい…」
こんな不満を抱えていると思います。
この記事には四十肩・五十肩について、徹底的に解説していきつつ、重要なポイントを記載しますので、ぜひゆっくり読み進めてみてください。
読み終わる頃には、「なぜ私の肩の痛みや動きが改善しないのか?」が明確にご理解いただけるはずです。
四十肩・五十肩を徹底解説
四十肩・五十肩は、別名『肩関節周囲炎』と呼ばれ、肩の痛みと動き辛さが特徴的な病態。
特に40〜60歳の中年層に発症しやすく、比較的女性が多い(全体の約60〜65%が女性)とされています。
糖尿病や甲状腺機能障害との関連があることも知られており、症状は、肩の可動域が狭まる軽度のものから、完全に腕が動かせなくなる重度のものまであります。
肩関節の周囲(関節包、滑膜、周辺の靭帯や腱)に慢性的な炎症と線維化(筋肉や筋膜がボソボソしてくる)が起こることにより、肩の痛みが出現。
肩関節の動きをスムーズにするための滑液包や関節包が癒着(ゆちゃく)すると動きが悪くなり、”全く肩が挙がらない”状態になります。
症状は一般に、痛みが徐々に始まり、肩の動きが次第に制限されるという経過をたどり、通常は「炎症期」「拘縮期(こうしゅく)」「回復期」の3段階に分けられます。
少し掘り下げていきましょう!
四十肩・五十肩の炎症期
徐々に肩の痛みが出現し、夜間痛や日常生活での痛みが強くなります。期間は通常3〜9ヶ月続きます。
動かすと痛みがひどくなります。関節の滑膜や関節包に炎症が起き、可動域制限が始まります。
この段階は痛みが主な特徴。
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痛みの出現と悪化
- 初期段階では、肩関節内の炎症が始まり、徐々に痛みが出現。
- 特に夜間に痛みが増すことが多く、安静時にも不快感があるため、睡眠障害に悩む方も少なくありません。
- 肩を動かすたびに激しい痛み(ズッキーン!と鋭く刺すような痛み)を感じるため、日常生活に大きな支障が出てきます。
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肩の動きが制限される
- 炎症が進行するにつれて、動かすこと自体が苦痛となり、自然と肩の使用が減少してきます。
- その結果、徐々に肩の動かしにくさ(可動域制限)が現れ始めますが、この段階ではまだ極端な制限には至っていない場合がほとんどです。
四十肩・五十肩の拘縮期
痛みは比較的軽減するものの(ジワジワと重い痛みが続く)、肩の動きが悪化します。期間は通常4〜12ヶ月続く。
関節包が厚く固まり、肩関節の可動域が大幅に制限。
この段階では筋肉や筋膜の線維化が伴っています。
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肩の著しい制限
- 炎症期を経た後、炎症が良くなってきた一方で、関節包が線維化し、硬直していくため、肩の可動域が顕著に制限されます。
- 特に肩を外側に回す動きや、外側から開いてくる動き、前側に上げる動きが制限されるため日常生活の中で腕を上げる、後ろに回すなどの動作が非常に制限されます。
- 日常動作では、後ろの荷物を取る、台所の上の棚から鍋を取る、洗濯物の出し入れ、お洋服や下着の着脱ができなくなります
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痛みの変化
- この段階では、炎症期ほどの激しい痛みはやや軽減することが多いですが、動かすと痛みが生じるため、『動かし辛い!」という機能的な問題が主となります。
四十肩・五十肩の回復期
徐々に可動域が改善していきますが、完全な回復までには6〜12ヶ月以上かかることもあります。
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徐々に改善する可動域
- 回復期に入ると、炎症は完全に収束し、線維化した組織の回復が進むことで、関節の曲げ伸ばしがやりやすくなってきます
- 大体この辺になってくると、日常生活での動きもできるようになってくるので、あまり生活では困らないのですが、
「もう少し肩が上がれば物を取りやすいのに」
「もうちょっと体の後に腕が回ると着替えやすい」
「後にサッと手を伸ばすと思いがけず痛みが走る」
このような状態。
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痛みの軽減
- 痛み自体は拘縮期よりもだいぶ減っています。
しかし、無意識に手を伸ばしたり、少し重いものをパッと持った時に痛みが走る時が。
回復期でどれだけ徒手的に介入するかによって、改善するスピードが全く変わります!
- 痛み自体は拘縮期よりもだいぶ減っています。
四十肩・五十肩と糖尿病の関係は?
ここでは、なぜ四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)は糖尿病との関連性が高いのかを詳しく説明していきます。
現在、糖尿病に足を踏み入れている状態の方も、要注意ですのでゆっくり読み進めてみてください。
四十肩・五十肩と糖の関係!
普段、体の中では糖はエネルギーとして使われます。しかし、糖尿病のように血液中の糖の量が多くなると、その余った糖が、体の中のタンパク質や脂質に自然くっついてしまいます。
その結果、糖がくっついたタンパク質は、本来の働きを失いやすく、硬くなったり、壊れやすくなったりします。これが長く続くと、体の組織が「硬直」したり、「動きにくく」なったりする原因となります。
糖化反応が進むと、糖がくっついたタンパク質や脂質がさらに変化して、AGEs(Advanced Glycation End-products:終末糖化産物)という、体にとっては毒になる物質になります。
AGEsが体内にたまると、血管が硬くなったり、関節が動きにくくなったり、さまざまな病気のリスクを高めると考えられています。
糖尿病のリスクが高い方や、すでに糖尿病を発症してしまっている状態だと、AGEs(終末糖化産物)が関節周囲の組織を硬化させてしまうため、肩関節周囲炎である四十肩・五十肩を引き起こしやすくなると考えられています。
さらに、糖尿病では小さな血管の負傷や停滞の問題(微小血管障害)が生じやすく、これが肩関節周囲の軟部組織への血流不足を引き起こします!
血流が悪くなると、傷ついた組織の回復能力が低下し、慢性的な炎症状態や線維化が進行しやすくなります。
この血流不足とそれに伴う組織の酸素不足は、肩の関節包や滑液包の栄養状態を悪化させ、最終的には関節包の癒着や拘縮を助長する要因となります。
拘縮になってしまう本当に肩が動かなくなる状態なので注意です!
甲状腺障害と四十肩・五十肩
ここでは、なぜ甲状腺障害と四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)との関連性が高いかを詳しく説明していきます。
現在、甲状腺障害を発症している方は特に必読です。
代謝異常と四十肩・五十肩
特に甲状腺機能低下症においては、全身の代謝が低下し、皮膚や関節にヒアルロン酸やグリコサミノグリカンの蓄積がみられることが知られています!
ヒアルロン酸と聞くと、「なんだかお肌に良さそう」そんなイメージを持つと思うのですが、増えすぎた状態は体に全く良くありません。
ホルモンの低下が続くことで、急激に増えたヒアルロン酸は”水分を過剰に含む性質“を持っています。
水分を過剰に含むということは、「腫れ」や「硬直」を引き起こし、さらには筋肉や腱などを線維化させる作用があります。
関節包に沈着すると硬直してくるので、柔軟性が無くなります。
結果として、肩関節の可動域が悪くなってしまいます。
免疫異常と四十肩・五十肩
甲状腺障害はしばしば自己免疫疾患(例:橋本病、グレーブス病)を伴います。
自己免疫疾患とは、「自分の細胞が自分を攻撃」するような状態で、自己免疫疾患の原因そのものはまだまだ不明な点が多いようです。
免疫異常(自分の細胞を攻撃)が引き起こされると、慢性的に炎症状態となります。
その結果として、肩関節周囲も持続的な炎症が発生し、最終的には筋肉や腱が線維化し癒着が進むリスクが高まるのです。
四十肩・五十肩のおすすめ体操
四十肩・五十肩の場合、気を付けなければいけないのは「炎症期」に積極的に動かしすぎるとかえって悪化してしまうことです。
運動やストレッチをしても良いタイミングは、夜間時痛がおさまったタイミングで実践するのがベストです。
夜間に多少痛いくらいであれば、動かした方が回復しやすいです!
理由は動かさないと
・血流不足
・筋肉が硬くなる
・関節が硬くなる
・栄養不全
これらが起きてしまうためです。
それでは、おすすめの体操方法にはどんなものがあるのか?
確認していきましょう。
①、四十肩・五十肩にオススメ体操
1番最初にオススメしたいのは「ブラブラ体操」です。
図の通り、腕を前後にブラブラさせる体操です。
ちょっとコツが必要なので、そちらを解説していきますね
まず、腕の力を使ってブラブラさせてはNGです。
体を前後に揺すって、その反動で腕をブラブラ動かすのです。
体の反動を使って腕を動かすことで、腕自体をリラックスさせながら、関節や筋肉に刺激を入れていくことができます。
なおかつ、腕の重さを使って、肩の関節周囲にある腱や関節包なども適度に伸張してくれるため、関節同士を引きはなすことができます。
大体30回を目処に実践してみてください。
できれば朝昼晩に出来るとバッチリです
四十肩・五十肩の調子が少しずつ良くなってきたら、手首におもりを巻きつけ(重錘)、さらに伸張刺激を加えると良いです!
ですが、最初は決して無理しないようにしてくださいね
②、四十肩・五十肩にオススメ体操
次は手首や指のストレッチです。
実は、四十肩・五十肩の多くは手首や各指から問題が起きていることが本当に多いです!
図のように、手首のストレッチを30秒ずつ両側実施するようにしてください。
そうすると、前腕の筋肉が緩むので、肩につづく筋肉も柔らかくなってくれます。
あとは、母指球筋を柔らかくすることも忘れずに。
母指球筋は指の中で最も重要な「キージョイント」とも呼ばれ、とても自由に動いてくれます。
それゆえトラブルを起こしやすいことでも有名です。
実は母指球筋は猫背の要因になる大胸筋と直接繋がっています。
そのため、母指球筋が硬くなると、肩は内巻きに閉じ肩関節も肩甲骨も硬くなってしまうのです!
お風呂に入っているときでも入念に母指球筋を柔らかくしてあげてください。
さらに、オススメなのは、指と指の間にある「骨間筋」を柔らかくすることです。
指と指が硬くなることで、肘や肩の動きも確実に悪くなります。
根本の指と指の間を縦に削ぐように刺激を入れてみてください!
③、四十肩・五十肩にオススメ体操
3つ目におすすめするのは、手を後ろに伸ばし、腕を下ろした状態で外側・内側にねじる運動です。
四十肩や五十肩は、
・肩を前側に上げる
・腕を後ろで組む
・腕を後ろに伸ばす
・真横から上げる
これらの動きで痛みや可動域制限を伴うことがほとんど
そして、腕を下ろした状態で外側や内側にねじる運動は、肩関節の「起点」になる動きでとても大切な動きなんです。
内側にねじれる動きができないと肩を前側に上げたり、腕を後ろに伸ばす、腕を後で組む動きが阻害されます。
外側にねじる動きができないと、腕を真横から上げる動きが阻害されます。
そのため、この運動は入念に実践していただきたいです。
回数は、ゆーっくりした動き+深呼吸をしながら、15回ほど実践していただくのがオススメです。
④、四十肩・五十肩にオススメ体操
③の動きができるようになってくると、腕を少しずつ後ろに伸ばせるようになってくるはずです。
そうしたら、さらに動きを広げていくために、上の図のようにストレッチしていきましょう。
この動き自体は少し負担がかかる動きなので、痛みに注意しながら実施しましょう。
コツは深呼吸しながらストレッチする方の肩甲骨は下げておくこと(上がったりしないように注意!怒り肩みたいな状態)です。
ストレッチ自体は、最初は15秒持続したストレッチをして、20秒、30秒と増やしていきましょう。
たまに、グッグッ!と引っ張って反動をつけてやる方がいるのですが、これは筋肉や腱を痛めるのでNGです。
⑤、四十肩・五十肩にオススメ体操
最後にご紹介したいのが、大きく腕を動かす運動です。
肘を曲げて肩関節や肩甲骨をダイナミックに動かしていきます
コツは、肘が上側に向いたときは、天井につけるくらいの勢いでしっかり突き上げること。
そして肘が下側に向いたときは、肘を地面につけるイメージで動かすことが大切です!
単純に動かすだけではなくイメージを持って動かすことで、体の協調的な動きを作り出せるので、オススメです。
前回し15回、後ろ回し15回をそれぞれ実施するようにしてみてください。
集中すると、ついつい呼吸を忘れてしまうことがあるので、しっかり深呼吸することも忘れずに!
四十肩・五十肩のまとめ
ここまで長ーい記事を読んでいただき本当にありがとうございます。
少しでもお役に立てましたでしょうか?
記事を構成しながら、実際に当院へご来院された「肩の痛みで寝れない」患者様を、頭の片隅に想像しながら一所懸命書きました。
お一人で出来るセルフトレーニングも、本当に効果のある運動だけ厳選してご紹介しました。
この体操だけで良くなれば全く問題ありません!
むしろそうなって頂いた方が嬉しいです。
しかし、残念ながらセルフトレーニングでは回復しきらない方も、いらっしゃいます。痛みが進行するとどんどん肩の可動域が悪くなり、日常生活に支障を来すようになります。
そんな時は一人で悩まず、ご相談いただけると幸いです。
まずは「私の状態って改善しますか?」、「私って四十肩ですか?五十肩ですか?」
このようなご質問でも全く問題ありません
大事な体をそのまま放置しない。これだけ守っていただければ嬉しいです
これからの生活や人生そのものが彩りあると願っています。